「鍵盤の上で全部バンドをやる」ピアノを武器に戦う、日食なつこの魅力

ピアノの弾き語りのイメージは?と言われると、なぜだか白いワンピースを着たつやつやした髪の女性が思い浮かんでいた。

清涼感でみずみずしさにあふれ歌声は優しい。背景もなんだかキラキラしている。

ピアノ弾き語りというとそういう画がいつも思い浮かんだ。

でもそれは、「日食なつこ」というアーティストを知る以前までの話だ。

まずはこれを見て欲しい。

「水流のロック」

日食なつこがピアノを弾けばバンドとして成立する

対談の中で日食なつこは、”ピアノドラムっていう編成でもバンドの中に闘いに行ける”と語っている。

参考:日食なつこ×津野米咲(赤い公園)、スペシャルリスペクト対談!

それはどういうことなのか。

バンドの中に闘いに行く、ということは
ピアノドラムだけでもうバンドとして成立するということだ。

それだけ彼女のピアノには魅力がある。

歌声もピアノの音の粒も力強く、両立して聞こえてくる。
ただのコードを弾く伴奏じゃなくて印象的なリフだ。
歌の背景で鳴っていてもとても存在感がある。

一曲に厚みがあって、奥行きがある音で埋め尽くされている。

曲に奥行きや安定感をもたらすベース的な役割を果たすのは左手、
右手は曲の性格を印象づける旋律を主に弾いている。

ただ、曲の場面によって、ピアノで鳴らす音の役割が変化する。
ギターでいうリフだったり、歌を支えるバッキングだったり、
役割を変えながら指が縦横無尽に鍵盤の上を動いていく。

一曲の中で主役にも脇役にもなれる。
あらためてピアノでここまで多彩な音を奏でることができるんだ、と見せつけられる。
まずほとんどピアノだけで成立してしまう。

そして、よく一緒にやっているドラマーは、komaki氏。
以前はtricotというバンドで叩いていた。

手数が多くて、スキマをつくらず、ピアノの音を際立たせる。
komaki氏のドラムは、彼女のピアノとの相性がとても良い。

そして、”世界がどよめけばいいと思うんだよ”という詞は、
ピアノで番狂わせを起こすという彼女自身の決意のようにも感じ取れる。

まさに、エバーグリーンでピースフルなイメージとは対極にある彼女の歌。

歌を聴いていて、歌詞が聴き取りやすいのも大きな魅力の一つ。

日食なつこ おすすめの曲6選

「ヒーロー失踪」

ウッドベースが入ってるという要素もあってか、サビで急に裏拍になったとたんにジャズの匂いがする。
サビから間奏にかけてウッドベースとドラムの追い立ててくるような音。
疾走感がある中にも、ピアノ・ベース・ドラムの3者がピタッとはまる瞬間があって気持ちが良い。

「水流のロック」

冒頭でも紹介したこの曲ですが、これはベースが入っていないピアノドラムバージョンです。

この曲に限らず、彼女のライブを見ると「すごいな」と思うことがあるのですが。
まず、音源と生歌にほとんど違いがなくて、声も出てるし素晴らしいなと思う。

それから、ピアノと歌で拍が合わないところも、自然に歌い上げているところ。
ピアノ弾き語りはどうしても、ピアノか歌、どちらかのフレーズのリズムに引っ張られがちになる。
(特にサビ終わりあたり)
でも、そういう違和感は全くなくて、ピアノと歌をそれぞれ別々の人が担当しているようだ。
当たり前にやっているけど、両立させているのはすごいことだ。

「非売品少女」

日食なつこの曲は、サビもちょっと特徴的だけれど、
この非売品少女はストレートで分かりやすいメロディーだ。
”花束なんていらない ひた走るには邪魔くさいよ”

次の2曲はラブソングです。
フルバージョンがないので視聴してみてください。

「ハイウェイは気にも留めない」

失恋、別れの歌。
高速道路を走る速さと、思い出を忘れる早さを重ね合わせている。
淡々とした歌に聞こえるけど、最後のワンコーラスのサビで一気に切なくなる。

「ハッカシロップ」

強がりはバレるから一緒に居た方がいい、っていう上からの物言いだけど。
詞に出てくる人の不器用さが出ている素敵な詞だと思う。

「ヒューマン」

タイトル通り人間についての歌。初期の名曲。
”三角の頂点にて虫の息だヒューマン”

皮肉めいた歌詞も日食なつこの魅力。
この曲に限らず、どの曲にも強いメッセージがあって、
なにより文学的で歌詞だけ読んでも感じ入るものがある。

アルバム単位で1枚おすすめするとすれば、
バランス良く網羅されている「逆光で見えない」。
現時点でのベスト盤のような選曲で、彼女のいろんなタイプの曲が楽しめます。

また、「遊泳喫茶」というタイトルで各都市のカフェをライブでまわっているので、近くで見られるチャンス。
中には、お寺が会場のところもあります!笑

日食なつこ公式サイト

こんな記事も書いています。

歌がいらない日本のインストバンド4選【演奏がすべてを語る】

現場からは以上です!

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