Kan Sano「Ghost Notes」|緻密さと気持ちよさの波に呑み込まれる

今年5月のリリースからずっと愛聴しているKan Sanoのアルバム「Ghost Notes」の話をしたい。

ポロポロと鍵盤を叩くキーボード。その音は不規則に落ちてくる雨粒のような自由なフレージングだ。

しかしひとたびボーカルやほかの楽器の音が聴こえてくると、印象はひっくり返る。

おしゃれでご機嫌、でも緻密な音楽。
これがすべて1人のアーティストから発せられたものだなんて信じがたい。だからその多彩な音の魅力にみんな引き込まれてしまえばいい。

Kan Sano氏にはキーボーディスト、プロデューサー、トラックメイカーなどいくつもの顔があり、活動は多岐に渡る。

バークリーのピアノ専攻ジャズ作曲科出身という経歴から"音楽インテリ"という印象もある。(憧れとリスペクトを込めて)

じつは彼を知ったのはNetflixで配信されている「テラスハウス」からだった。

テラスハウス軽井沢編で、ミュージシャンの上村翔平が曲のリミックスをKan Sano氏に依頼するという場面があったのだ。

Kan Sano氏自身はマルチプレイヤーでもあり、キーボードをはじめ、ギター、ドラム、ベースといったバンドの骨組みとなる楽器を一通りやっている。

ループステーションを使うこの「DT pt.2」では曲が作られていく過程をリアルタイムで感じられる。

そしてある時はソロピアノ、ある時は打ち込み+生楽器の融合など、その時々でアルバムの毛色が違っている。その違いや幅広さを耳で味わうという楽しみ方をわたしはぜひ提案したい。知らずに聴いたらそれぞれまったく違うアーティストに聞こえるから。

彼自身が影響を受けたネオソウルをベースにしているだけあって、ビート感がありリフも耳に残る。

さらに全体的にジャズのアプローチも色濃い。
楽器がユニゾンで重なるキメ、メロディーの締めくくりがすべてワンフレーズに帰結する気持ち良さ。

独特に区切られた声も、聞き慣れた言葉とはまた違った響き方をする。さながら声もひとつの楽器のようだ。

最終的にすべて計算されたように心地よく耳におさまり通り抜けていく。特にこの「Baby On The Moon」でその雰囲気が感じられると思う。

また彼が参加しているバンド、Last Electroもその名の通り浮遊感のあるエレクトロニックで、リラックスタイムにはさらなる気持ち良さをもたらしてくれるはずだ。

作品によって雰囲気が違うので、いくつかのアルバムからぜひお気に入りを見つけてみてほしい。

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