2019年ベストソングTOP17

SpotifyとApple Music、結局どちらにも絞りきれずに2019年が終わってしまった。

すっかり生活の一部になった音楽配信サービスではシームレスに音源が聴ける。アーティストもアルバムもジャンルも横断的だ。

ふとアルバム収録曲が気に入ったり、曲の展開をなぞっていく歌詞に感嘆したりしながら、夜な夜な音楽を聴いてきた。

順位はだいたいで、どれも思い入れのある曲ばかりだ。そんなわけでわたしの2019年の総決算を一緒に聴いてもらえたらうれしい。

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17位:GRAPEVINE「Alright」

過去のことより変化してきた今をラフな肯定感で包み込むこの歌。すこしの皮肉を添えることも忘れてない。

あくまでストレートなギターロックに、ブラスのバッキングは底抜けに明るく気軽に聴ける。最高じゃん。

16位:Rei「Tourbillon」


ほぼインスト。フランス語でいうところの「渦巻き」を指すTourbillonは、ふわふわと螺旋状に揺れ動くような不思議な感覚。

ブルース、ロックにとどまらずジャズの技法を連想させるようなギタリスト・Reiの実力を見せつけられる。アレンジも寄せてるのかもしれないがTuck Andressみたいだ。

完全にアルバム曲の箸休め的存在だけど、個人的にはめちゃくちゃ好き。

15位:lyrical school「大人になっても」


これを聴いてる10代が大人になってもカラオケで歌ってみんなで盛り上がってほしいな。多様化する音楽のなかでも、これは共通言語になり得る曲だと思う。

懐かしい固有名詞が山盛りで涙が出そうになって自分の年齢を自覚する。エモさは固有名詞に宿る、となにかで読んだがその通りだなあ。

14位:BiS「STUPiD」



わたしはフラストレーションの発散方法も音楽なので、こういう身も蓋もないことを吐き出す曲に大いに救われている部分がある。

<だいたいが馬鹿しか聴かない歌>なんですが、煽るディストーションギターも、盛大に暴れるドラムも、おちょくるような歌い方も全方位に挑戦的でじつに清々しい。新しいBiSの始まりの歌。

13位:Homecomings「Cakes」


2018年に続く日本語詞でのリリースがうれしい。

アコースティックな雰囲気と、愛情に満ちたこの曲に何度も癒された。

12位:HAIM「Summer Girl」


アメリカのインディー。無機質で硬いビートにしなやかな女性の声がよく似合う。サックスがスマートで涼しげな印象を与える。

暑さがふっとやわらいだ夜の時間にぴったりだった。

11位:スピッツ「ありがとさん」


草野マサムネが書く詞が昔から本当に好きだ。

ホロリ涙には含まれてないもの
せめて声にして投げるよ
ありがとさん

時代を重ねながら彼らが歌うのはつまるところ愛、だ。そういうところにいちいちグッときて涙してしまう。

10位:the chef cooks me「Now's the time(New Feeling)」


オリジナルメンバーの脱退などバンドの形が変わる状況を経て、シンセサウンドを中心にした新しいNow's the timeに生まれ変わった。

全体的に強いビートが支配しつつも、ドラムやサックスの生音が華やかに映えるサウンド。この曲には多幸感というやわらかな表現より、生命力という形容がふさわしい。

9位:Kan Sano「House Of Mine」


UKのシンガー・Miller Blueを迎えて、もともとインストだったところから再構築したこの曲。

ループするピアノリフに乗せたジャズなのかヒップホップなのか、どちらの要素も振りまきながらただただ美しく展開していく。

今年は本当にKan Sanoをよく聴いた。
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8位:BiSH「GRUNGE WORLD」


怒涛のEPリリースが続き、満を辞して出たアルバムの最後を飾るこの曲。

アルバムのなかに激しさと柔らかさ、光と影のようなわかりやすい両極端の曲が際立つなかで、このGRUNGE WORLDは淡々としたモノローグのような位置にある。

主語が大きい普遍的な曲かと思いきや、

ちっぽけな誇り抱きかかえていて
噛みつきながらずっと生きてたいのに
前倣えはすこく苦手で
外れることはもっと怖くて
足がすくむんだ

この矛盾した感情を一気に描くところにすごく心動かされた。ただただ、わかる。

数えきれない悩みたちに戸惑うことなく進めたらいいのに
明日は明日の風が吹いて
雨が降り続いたとしても
足が前踏んだら
また何か始めるんだろう?

共感と控えめな前向きさが押し付けがましくなくて現代っぽいなと思う。


アイナ・ジ・エンドの過去と現在を切り取ったドキュメンタリーともリンクして、悩みながら進む人へ訴求する曲になっている。

7位:星野源「さらしもの(feat.PUNPEE)」


初のコラボレーションで固めたEPから選んだのは、PUNPEEとのヒップホップ。

自身をわかりやすく<さらしもの>と表現している。いままでの作品でもときどきシニカルな詞が登場したけれど、ヒップホップであらためて風刺的な一面を披露していて良いなと思った。

トラックも強いビートを柱に据えつつ、楽器を生かした音だ。ウワモノのラップ、打ち込み音、ピアノリフなどレイヤーを意識した作りになっている。結果、有機的で厚みのあるトラックに仕上がっていて聴きごたえは十分。

6位:FUNLETTERS「正解」


最近の音楽の傾向もあってか、今年はベッドルーム・ポップやエレクトロポップに惹かれることが多かった。

なかでもFUNLETTERSの作る曲は、音のうねりが聴く人の想像力をかき立てる。

無機質なトラックにボーカルの温もりがちょうどいい温度感だ。8分で刻むギターが星の瞬きのようで、その余韻のなか眠りに落ちるのが幸せだった。

5位:サカナクション「ナイロンの糸」


待望のアルバムから「忘れられないの」「モス」「マッチとピーナッツ」など名曲を挙げるには事欠かないけれど、敢えて選んだのはこれだ。

サカナクションには抑揚から最後に解放、という聴いてて気持ちいい構成の曲が多々ある。くるぞ、くるぞと内心思う。

「ユリイカ」がライブでは街の景色を淡々と投影する演出に対して、この「ナイロンの糸」はもっと内省的な開放感にあふれているように思う。「朝の歌」にも近い。

こういう余韻を引きずるような曲をこれからも期待してる。

4位:COMEBACK MY DAUGHTERS「I was young」


突然の嬉しいリリース。

もともとの透明感も手伝ってか、なんだか神々しささえ感じる。二つのメロディーが重なる最後のシンガロングがいつまでも尾を引いている。

3位:ROTH BART BARON「けもののなまえ feat.HANA」


不器用さや生きにくさを丁寧に歌ったら、こんな祈りのような曲に昇華されるんだろうか。

本質が変えられないなら、それを許容するしなやかさと優しさを持つしかない。そんな<けもの>について思いを巡らせてしまう。

全体的に厳かな雰囲気なのに、消し去れない切実さがあって聞き流せなかった。
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2位:鈴木愛理「Break it down」


FMのパワープレイで流れてきた本命。
展開するたび毎回本気のメロディーラインを浴びせてきてすごいなと思っていたら、楽曲提供と演奏がOfficial髭男dismだった。ただ納得。

鈴木愛理さんは℃-ute(ハロプロ)の元メンバー。可愛くて歌も上手くて最高だからMVは必ず見たほうがいい。

ヴォーカルが甘すぎずファンクのタイム感と相性抜群。そして爽快なベース無双。

1位:Ginger Root「Weather」


2019年のなかで一番の衝撃をもたらしてくれたGinger Root。DIY的なトラックメイキング。ベッドルーム・ポップの音像にすこしのソウルを混ぜ込み、どことなく懐かしさも感じられる。

Daryl Hall & John Oatesを現代にアップデートしたようなこのバランス感覚は絶妙。
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以上です。2020年の出会いにも期待したい。

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