サカナクションのツアー「SAKANAQUARIUM2018」Zepp名古屋公演1日目(6月20日)のライブへ行ってきた。
演出やセットリストなど盛大にネタバレしているので、これから行く方はご注意ください。
そして詳細に書いたので長文です。
今回はベストアルバム「魚図鑑」のリリースにあわせたツアーで、音源の内容からして新旧いろいろな曲が聴けそうだという期待感があった。
当日は開演ギリギリの19時に会場に到着。
幸いまだパラパラと入場中でなんとか間に合ったことに安堵した。
すぐにフロアに滑りこむ。
魚図鑑をなぞる
暗転した空間に絵が浮かび上がってくる。
「魚図鑑」の絵がステージに映し出されたあと、キラキラと光反射した海面を走るような映像が続く。
そして水面をバックにメンバーの名前が一人一人映し出されていき、フロアの空気が高まっていくのを肌で感じる。
メンバーがステージに現れたとき、ひときわ大きな歓声が上がった。
再び暗転。そして浮かび上がる「深海」という文字。
そうきたか!!と思った。
ベストアルバム「魚図鑑」は3枚組で、浅瀬・中層・深海というタイトルに分かれてそれぞれ曲が構成されている。
最初に深海がきたということは...
今回のライブは魚図鑑のカテゴライズをもとに、深海から浅瀬まで浮き上がってくるセットリストだな、と直感的に思った。
結果その予感は正解だった。
音源の中でも「深海」はメンバー自身が好きな曲を詰め込んだディスクで、アルバム曲やカップリング曲などコアな曲が多めだ。
あとどれくらい僕は深く潜れるだろう
深海から始まるライブの幕開けにふさわしい「朝の歌」の歌い出し。
暗く深い海に差しこむひと筋の光のようなピアノの音。
音に形はないけれど、体に染み込ませるようにじっくりと聴かせてくれる曲が並んだ。
音とともに、ステージ背景に広がる色味の少ないオイルアートが視覚に訴えてくる。
薄暗い海のイメージを強烈に印象づけているような気がした。
シャリシャリしたアコースティックな「フクロウ」は雨の空模様にシンクロして今日はいっそう心に染み入る。
かき消してしまう悲しい雨
薄い傘に涙の音
なんて叙情的な歌詞なのだろう。
野暮と分かりながら言葉にすると、雨と涙の暗喩があまりにも美しすぎる。
こんな高い表現力をこともなげに披露した「フクロウ」が収録されたのが1stアルバムという事実。
あらためてとんでもないバンドだ。
そうやって暗い海を漂いながらも少しずつ浮上していく。
初めてサカナクションを観る友達の横顔も熱を帯びてきて、私の視線にもまったく気がついていない。
よかった、もうすっかり引き込まれている。
徐々に音が重なって静かに盛り上がっていく「ティーンエイジ」、ひねりのない真っ直ぐなピアノが印象的な「アムスフィッシュ」と続く。
じっとりした音が身体に染み込んで、私もステージから目が離せなくなっている。
mellow
フクロウ
ティーンエイジ
アムスフィッシュ
真っ黒な幕がバンドセットの前に降りてきてメンバーが見えなくなる。
幕に映し出された文字は「中層」。
深海から中層へと浮上する。
"中層"の幕がバサッと落ちて音が降ってくる。
中層に浮上した最初の曲は「明日から」。
サウンドはシンセやエフェクトがかかった音に切り替わり、一気にアッパーで踊れる曲にシフトする。
そのまま「ネイティブダンサー」「涙ディライト」と続く。
どちらの曲もとびきり派手ではないけど、ベースのドライブ感が光る。
切なく叫ぶサビにシンガロングが重なる「スローモーション」から「仮面の街」でフロアに疾走感をまとったさざ波が起き、どんどん体温も空気も熱くなってくる。
ネイティブダンサー
涙ディライト
スローモーション
仮面の街
ついに浅瀬まで浮上した。
浅瀬はサカナクションの名刺となる曲ばかりで、「さあどれが来るんだろう」という観客の前のめりの期待を感じる。
クセのあるイントロが流れフロアを一気に沸かせるのは「新宝島」。
そして「新宝島」終わりに一郎くんが放った「日本勝ったね!」という一言から次の曲を悟ったフロア。
一瞬で空気が熱くなる。そのまま「Aoi」へ突入し、一気にたくさんの手が上がる。
(「Aoi」は高校サッカーのテーマ曲だった)
「ナイトフィッシングイズグッド」、QUEENのBohemian Raphsodyから着想を得たという、緩急のあるストーリーが詰まっている曲。聖歌のような美しいパートが今日も冴え渡っている。
続いてメンバーのコーラスは大きな武器だと、「表参道26時」であらためて思い知らされる。
「ルーキー」ではすっかり定番になった帯状のライトが頭の上をうごめく。
目線の少し上に広がるグリーンの光は、まるで水面のよう。
水中からキラキラした水面を眺めるような世界を一瞬で作り出す。
冒頭から「歌って!」と煽られ、完全に観客だけの歌声で始まった「アイデンティティ」。
左右に手を振ってフロアに予定調和の一体感が生まれる。
ステージ中央に5人が立ち並んで始まったのは「ミュージック」。
サカナクションのライブでは象徴的な光景だけど、毎回血の温度が上がるような感覚になる。要するにテンションがガッと上がるのだ。
普段だと「ミュージック」は抑えながらABメロを繰り返し、最後の大サビで解放される展開だ。
それが盛り上がりの最高潮を迎える大サビ前に突然暗くなった。そのままメロディーに突入すると思った瞬間、また明るくなるフロア。
そこに大量のシャボン玉が降り注いできた。
視界いっぱいに突き出た手の先の、たくさんのシャボン玉に見とれる。
ゆっくり揺れ落ちながら光るシャボン玉と一体となったシンガロング。
記憶に残るとても美しい光景だった。
一郎くんのそんな短い言葉で十分。観客はまだやる気満々だ。
最新曲「陽炎」を初めてライブで観て、本編はいったん幕を閉じた。
Aoi
ナイトフィッシングイズグッド
表参道26時
ルーキー
アイデンティティ
ミュージック
陽炎
音源とライブの音の違い
サカナクションのライブと音源の一番大きな違いはドラムの音だと思う。
もう少し詳しくいうとドラムの音というのはバスドラのことで、低音を身体に響くより重い音に加工している。
それがバンド全体のサウンドを印象づけている。
イメージは、でっかい花火が近くであがったときに感じるような、どっしりした音圧とともに身体の内側まで響く音。
それを全身で感じることができるのがライブの魅力だと思う。
またバンドの音をよく聴くと、音がまとまって飛んでくるのではなく、発せられる一つ一つの音にしっかりと輪郭がある。
歌も楽器もそれぞれが音の粒として独立して聴こえてくるというか。それはまとまって音を浴びることとは全く別の体験だ。
私が聴いていた位置は後方右寄りにもかかわらず、驚くほど音が立体的に聴こえる。
音の届け方へのこだわりが感じられて、その思いにも心が動かされた。
それからロックで踊れる音楽というと、重低音を担うリズム隊の音がカギになる。
ただ音圧を強調するだけではあんなグルーヴは出せない。ドラムとベースの演奏技術の高さと安定感があってこそだ。
だから女性ベーシストの端くれとして、草刈さんのプレイは心底憧れる。
サカナクションが信条とする、ダンスミュージックとロックの融合。
そのひとつの答えがこの音作りにある。
アンコールとMC
たくさんの拍手を浴びて再びステージに登場しアンコールが始まるが、「間違えちゃった・・・」というひと言で空気がやわらかくなった。
ゆっくりクールダウンするように「開花」をじっくり聴かせる。
きっちり決めてきた本編よりもリラックスした良い雰囲気だった。
一郎くんが口を開き、今回のツアーやアルバムについて話す。
(記憶だけなのでざっくりです)
フェスでは新曲やらなきゃいけないし、今日みたいに「朝の歌」から始めるとかやっぱりできない。
シーンとしちゃう(笑)
そういう意味で「グッドバイ」とか失敗した。
良い曲なんだけどね。今日の"中層"の幕のイメージは、「Kikuuiki」の時の演出のオマージュだった。
幕が落ちて「明日から」が始まる感じとか、「ああ、こんなふうにやってたなあ」と過去の映像を見て思い出した。
これが分かる人は相当マニアックだよ。
(※「Kikuuiki」はサカナクションの4thアルバム。リリースツアーの時の演出を再現した)
本編は相当決めて作り込んでる。
セットリストにあわせて照明とかプログラムを組んでる。
でも明日はまた8曲くらいガラッと変える。いま精いっぱいアルバムを作ってるからもうちょっと、もうちょっと待ってほしい。
僕たちももう早く新しい曲がやりたい。
あれだけ多彩な照明の演出に負けない演奏ができるサカナクションはやはりプロだなと思う。
ライブなんだけど、一段上のエンターテイメントという感じがしている。
最後に写真撮影の許可が出て観客みんな撮りまくっていた。
(友達が撮影した写真)
私の視界からはほぼスマホしか見えなかったので早々にあきらめた。笑
ホーリーダンス
夜の踊り子
セットリストまとめ
mellow
フクロウ
ティーンエイジ
アムスフィッシュ
明日から
ネイティブダンサー
涙ディライト
スローモーション
仮面の街
新宝島
Aoi
ナイトフィッシングイズグッド
表参道26時
ルーキー
アイデンティティ
ミュージック
陽炎
開花
ホーリーダンス
夜の踊り子
別の記事で日記のような生々しい感想も書きたいと思う。
過去にはベストアルバム「魚図鑑」と音楽業界でのサカナクションの方向性について書いています。
本当に長くなりましたが、現場からは以上です!