ヒップホップ界隈に詳しくなくとも、この韻シストは音楽が好きならば一度は耳にしたことがある名前じゃなかろうか。
韻シストの魅力は、生バンドの音でグルーヴすることに尽きると思っている。
人が弾いている楽器の音が好きだから、骨太で血の通った音という感じがして個人的にはすごくぐっとくる。
さっそく最近出たアルバム「IN-FINITY」からこの曲を聴いてほしい。
韻シストを歌った名刺代わりの一曲。
そしてアルバムの最高にキャッチーな華。
「Don't worry」
それはないわ 神様
あんまりや 神様
でもね でもね でもね
誰のせいでもない
バスケに打ち込む日々が淡々と流れる。
サビメロへの期待が高まるなか、ドロップされるこのパンチライン。なによりめちゃくちゃキャッチー。
日常を切り取ってスポットライトを当てたり、その場面をより詳細に描写しながら言葉を転がすヒップホップ。
ヒップホップの構造上、演者は編集者としての側面もあると言える。
というのも、流れるように言葉を紡ぐ"リリック"のほうが圧倒的に伝えられる情報量が多い。
どの場面に光を当てどんな言葉を紡ぐのか。それを選び取って深掘りするのが感性だ。
感性はイコール「センス」と言い換えて差し支えない。
だからリスナーにはより生々しい世界観を見せることができるヒップホップの性質上、それぞれのセンスを下地にできた曲は良くも悪くも個性の強いものになると思う。
ヒップホップ総論的な話から韻シストへ話を戻そう。
韻シストはセンスのある優秀な編集者だと思う。
彼らの切り取ってくれる世界をみてみよう。
昨年出たコンセプトアルバム「STUDIO 韻シスト」からの一曲、「HOT COFFEE」。
コーヒーにまつわる描写がとても実体的だ。直球でコーヒーについての曲っていままであっただろうか。
クリーンなギターの音色やミドルテンポがコーヒーブレイクの心地いい脱力感に見事にフィットしている。
ミルで弾けたいつかの髪飾り
お気に入りの香り
漂うコーヒーの香りを暗に示す。粋だ、そしてこの詞だけでも韻シストの感性を信じられると思わない?
すこし話はそれるけど、韻シストは体感的にDragon Ashと同時期に出ているのに明暗が分かれてしまった感がある。
韻シストはもっともっと聴かれるべきだ。頼むよ、これを読んでくれてるあなた。
現場からは以上です。