Esperanza Spalding(エスペランザ・スポルディング)「Radio Music Society」|ジャンルも溶かすようなメロウな歌声とベース

個性的な髪型につい目がいってしまうが、彼女は歌うベーシストだ。

のびやかで可愛らしい彼女の声。
ベースも彼女の声に呼応するようにとてもメロディアスで歌うようだ。


ベースを弾きながら主旋律のメロディーを歌い時々ハモる。これを彼女はこともなげに自然体でやっているように見える。

  • 曲のコード進行に沿ってベースを弾く
  • 主旋律を歌ったり、ピアノのメロディーにあわせてハモる(ベースの旋律・リズムと全く違うメロディーを歌う)

この作業を同時進行でやっているということをまったく感じさせない。楽しげに聴こえる声の奥ではすごいことが繰り広げられているのだ。

歌とベースが縦横無尽にかけまわる。突然すり寄ってきたり遠くへ駆け出していく猫のようにその展開は読めない。

手と口で全くバラバラのことをやっていて、その全てが計算されて曲に落とし込まれていることがすごい。

高度な技術というのは、違和感がなく自然な状態のなかで発揮されているんだなと思い知らされる。

どういう頭の構造になっているのか、どんな感覚でやっているのか...凡人には理解が及ばない。

特にこのアルバムはジャズを軸としつつ、ジャンルにとらわれない曲がたくさん聴けて楽しい。
ポップでフュージョンもあり、たまに登場するローズピアノの音に心が躍る。

ジャズというと小難しくとっつきにくいイメージもあるかもしれないが、彼女の明るく人懐っこい歌声でその印象もずいぶん薄れるんじゃないかと思う。
きっと彼女の手にかかればジャンルという垣根は特に意味を持たない。
楽器に埋もれない声と伸びやかなスキャットがすごく心地良い。
何も考えずとも聴いているだけで心を上向きにしてくれる。

歌が好きな人もメロウなベースが聴きたい人もきっと満足する。

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現場からは以上です。
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