森山直太朗「822」に寄せて|歌が上手すぎるというのは単なる過小評価だ

新しいアルバム「822」が出たこのタイミングで森山直太朗について話したい。

どうも森山直太朗の凄さについて話している人が少ない気がしている。気のせいかな?

森山直太朗といえば大ヒット曲「さくら」のイメージで止まっている人もいると思う。

ピアノだけしたがえて、質素な佇まいで堂々と歌うあれだ。

「さくら」は言うまでもない"ただの名曲"で彼も当時は歌がうますぎる若者だ。

さくらで独唱するイメージが定着しすぎて、デビュー曲にしてこんな名曲を世に送り出していることは意外と知られていない。

星屑のセレナーデ

歌がうまいことはもう当然の事実。

言葉の多さも音程の上下も乗りこなして、絶妙なドライブ感のある歌声。

クセのある独特な内容でも、圧倒的歌唱力で呑み込んで唯一無二にしてしまうことが森山直太朗の最大の武器だ。

今回のアルバム「822」でもその真価を十分に発揮している。

なかでもMVを含めてとても惹かれたのは「絶対、大丈夫」という曲だ。


脈絡のなさそうな独特な映像をつなぎあわせて、めまぐるしく変わる場面。

「絶対、大丈夫」というタイトルとは裏腹にどんどん不安が募ってくる。

シカ
ほぼ「大丈夫」しか言ってないところが逆にやばい

「絶対大丈夫」という言葉を"お守り"としてすべてを丸くおさめようとする意図も感じられるし、楽観思考のアンチテーゼのようにも感じる。

「言葉×音楽」「言葉×映像」など、2つの要素を掛け合わせたときに、双方のイメージに大きなギャップが生まれるほど興味をそそられる。

その考えはおそらく作品として説得力があることが前提だ。

奇をてらっただけのコミックソングになりがちなところを、彼の圧倒的歌唱力をもってなんだか納得させられてしまう。

曲のなかに目立たず横たわっている彼の本音みたいなものをつい探してみたくなる。


曲も途中で4ビートから8ビートに展開する。

ストリングスの役割もどことなく変わってくる。音数が多くなるとコミカルに聞こえて楽しい。

とにかく「大丈夫」って言ってるだけなのに、1曲聞き終わるとお腹いっぱいになっている。飽きさせないすごい曲だ。

繰り返すけれど、歌が上手すぎるから壮大な展開にも負けない説得力があるのだ。

しかし歌がうますぎるだけで終わらず、常に実験的で自由な曲を作っていることも間違いないのだ。

そこにアーティストとしての矜持(きょうじ)が感じられて、すごく惹かれる。

決して歌が上手すぎるだけでは終わらない。

クセのある歌を中和させるために"ただの名曲"も置いておく。

人間の森

ちなみにアルバム「822」はひたすらSiriに語りかけているだけの曲から始まっている。
群青



1曲目から森山直太朗の世界観にどっぷり浸れるので、ぜひ聴いてみてほしい。
現場からは以上です。

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