ツイッターで音楽のことや自虐ネタをつぶやいているあたそ氏の本が出た。
好きなアイドルにつきまとう人を「怖いナア」と思ってたけど、まじで疲労が溜まりすぎて物事の判断ができない限界に達したときに顔も音楽も才能もクソ好みなバンドの曲聴いて「これ、私のための曲じゃない?」から「もしかして私たち…付き合ってる?」という思考回路になったので、もう何も言えねえ…
— あたそ (@ataso00) 2018年6月25日
エッセイの冒頭はあたそ氏が母親にブスと言われ続け、女でいる自分が嫌いでひどいコンプレックスだったところから始まる。
自分の行動を妨げてしまうような呪いの言葉は、なにも「ブス」に限らない。
言葉が発せられる口の形を見ただけで胸が痛くなるような言葉をきっとそれぞれが抱えているだろう。
呪いの言葉のこわいところは本人が自分で折り合いをつけないと前に進めないところだ。
人がいくら「そんなことない」と励ましてコンプレックスを取り除こうとしてもダメなのだ。
その考えを前提としながらも
ほんのわずかな人が、私の言葉や考えに救われればいい。
否定的だったことを少しでも肯定できるようになればいいし、自分のことを受け入れるヒントになればいいと。
という思いで書かれたこの本。
- 女性としてではなく、大人になった人間としてひとつの考え方を知りたい
そういう人に読んでもらえると新しい気づきが得られると思う。
深く共感して印象に残った内容をまとめてみた。
「女」を持ち出されることへの違和感
ファッションや立ち振る舞いにもTPOがあるのに、たまにそれを無視したタイミングで繰り出される言葉がある。
それは思うに「女子力」。
必要以上に女性をクローズアップしないでくれ~と思う。
世間一般でいうところの「女子力」とは男性に気に入られる能力という意味に聞こえる。
女子力が高い=男性に気に入られるための打算的な行いが得意というマイナスな意味にとらえてしまう。
男性のためにやっているわけではないことも「女子力」という枠にはめられるととたんに居心地が悪い。
掃除しただけで女子力高いとかやめて、場所をとっているゴミを早く片付けたかっただけ。と、内心いちいち気になる。
要するに「男性に対して女子力の高さをアピールするためにやったんじゃない」と弁解したくなる。
同じ女性からどう見られるか無意識のうちに考えてしまうというのは女性あるあるなのだ。
女子力が低いという一方的な評価もまたしかり。
「男性にとって都合のいい能力を兼ね備えてなくて悪かったなー」となる。
どちらにせよ「女子力」という言葉を持ち出すととたんにややこしくなるのだ。
これはわたしの解釈がゆがんでいるせいであって、「女子力が高い」ことを褒め言葉として使っている人におそらく悪意はない。
素直じゃない受け取り方をしてしまう人は、女性社会で息苦しさを感じたことがある人だと思う。
この本で今まで思っていた「女子力」についての違和感を共有できて静かに感激した。
女子力という言葉を使うのをやめて、素直に「気遣いできるね」「料理うまいね」でいいじゃん。それでみんな幸せ。
大事なのは環境よりも準備運動
干渉されることは少なくなるしお金の使い道も自分で決められるから大人は自由だ。
徐々に窮屈になっていくもんだと勝手に思っていた大人がまるで自由なものだから、せっかくなら何かやらないともったいない気がしている。
その一方でいまさら何かに挑戦することもとても面倒な気もしている。
子どもや仕事を言い訳にして、芽生えた小さな思いを無視してしまおうかと思うこともある。
だからこそ頼まれてもいないことに時間を割いて喜んでやるということは本当に好きなことなんだと、逆説的に実感することがある。
人前に出る予定がなくても楽器や歌を練習してみたり、こうして文章を綴ることもそう。
時間の制約とか身の周りの事情とか関係なく、ただ好きでやっていることは強い。
自分の人生をガラッと変えてしまうような運命の出来事に巡りあったとき、私は最善の選択ができるように、準備運動をしていたい。
いま置かれている環境で続けていくこと、持っているものを磨いていくこと=準備運動。
それによって自分の好きな事に対する嗅覚がより敏感になったり、チャンスに気づくことができるんだと思う。
そんなことを改めて感じさせてくれた。
まとめ しなやかに生きる
この本のタイトル「女を忘れるといいぞ」は、まずは自分にとって息苦しい価値観からなるべく遠ざかるのがいいよという意味だ。
性別、働き方、学歴など自分を縛るものを挙げたらきりがない。
だから自分を縛るものからスルっと抜け出す「しなやかさ」があればいい。
自分にあてはめてみると、30代で女で会社員で・・・そういう自意識から解放される瞬間=心から楽しいと思える時間なんだと思う。
普段の自分を忘れるのは好きなことをやっているときだ。
そしてささいなことでも好きなことを大切にすることが、生きやすさや自分を認めることにつながる。
そのことを再確認させてくれる本。
女性であること・置かれている状況に息苦しさを感じている人は読んでみてほしい。今よりきっと少し楽になる。